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2010年7月14日

「ターゲティングⅡ」 絵文字によるメール

 携帯デコメ(デコレーション・メール)を下さる知り合いの女性がいて、私の方はパソコンのメールでテキストだけの返信を差し上げていました。

 ある日、プライベートな集まりに招待され......、

 「おいしい料理を用意して、お待ちしております」とあり、

 ハートがたくさん飛び出す封筒とか、ネオンのように光る虹だとか、ドキドキするハートマークとか、

 たくさん散りばめてありました。

 絵文字は記号であり、言語が記号の体系に従属するとすれば、多義性・両義性あるいは複義性の罠に落ち込むことになる可能性が少なくない。わたしは、デコメ使いの魔女に魔法をかけられ、金魚のフンとなってその場所に赴いたのだった、が......。

 サイドビジネスのターゲティング(マーケティング用語で「見込み客」の意味)になっていた、とは。
 わたしもまた、デコメではない絵文字を使って、意趣返しを試みたのであった。

     『 ターゲティングⅡ

 <うるわしき>は「紅い」金魚に、<毒>は黒金魚に、見立てています。
 <愛>という絵文字は本文では簡略体を用いていますが、正式字体は下に表示した彩色文字です。

 中国雲南省のトンパでは、納西(ナシ)族がトンパ文字を今でも祭祀などで使っています。
 漢字系ではなく、東ビルマ言語系らしいとされ、きちんと文法もあるし、読みもある。

 トンパ文字は絵文字ですけれど、カラフルな絵文字と、墨で書く実用向けの2種類があるようです。
 詩の中で使った「愛」という文字は、男女が座っていて、間に愛を表す象徴が描かれます。
 墨絵文字の方は、これが絡み合った形で、縄のような感じですごさがあります。

 今日、言語学は記号学のひとつの領域とみなされており、
 絵文字というのは、まさに言葉と記号との狭間の領域で表象を行っているといえるでしょう。
 だからこそ、「感覚・意識と言葉の発生」という私の興味に訴えてくるわけです。

 最近の携帯メールでは、デコメという動いたり派手な装飾がついた絵文字が、とくに若い女性の間で盛んに使われていますね。アニメーションgif という画像形式です。
 けれども、デコメの絵文字は文法があるわけでもないし、デノテーション的な規範もなく、発信者の思いは、受け手の恣意的解釈に委ねられる要素が大きい。

 たとえば、冒頭に封筒のデコメ絵文字がある。
 すると、その封筒が自動的に開きハートがたくさん飛び出してくる。
 あるいは、文末に笑顔文字とドキドキと動くハートが置かれていたり...。

 
 こういうメールを頂くと、私などは「愛情表現!」かな?とオヤジ的に思ってしまうわけですね。
 でも、ハートの意味は「ご自愛ください」という意味です、などとすまして言われたりしたら、恥ずかしいよね。

 それで、「飛んで火に入る夏の虫」ということわざ通り、思うつぼにはまってしまったというか......、
 私はその女性を介して、人買いのおじさんに売られてしまったのと同じだな、と感じる経験をした
 ...というわけです。
 「おいしい料理」というのは、「カモ・ネギ鍋」だったりして、ね。

 ちょっと待ってよ!だな。

 それに対して、ここで紹介するトンパの絵文字は、
 きちんと文法もあり、辞書的な意味も整理されていますので、
 それにしたがってコノテーションとしてのウラの意味を付加するのは、れっきとして言葉の表現だ、 
 ...ということです。

 メールでは、当然のことながらルビは入れませんけど、
 詩の中ではルビ付きにしてあります。メディアの違いがあるので、表現も若干変更されます。

 意識的にも無意識にも、相手の誤解を誘うをような言葉ではないということですね。
 共通感覚という土壌があるのか、ないのか、その違いは大きいものがあります。

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このページは、小林由典が2010年7月14日 22:57に書いた記事です。

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