臨詩の方法と臨詩「祖師谷」

荒川洋治の詩はひねりが効いていて、一筋縄でとらえることは容易でない。であれば、「おひねり返し」の技を磨かねばならないだろう。主要キーワードを列挙し、裏の意味をあぶり出す。

 荒川洋治の『遣唐』のような詩を解読したければ、マインド・マップ法をやってみると良いかと思う。

 個々のキーワードについて、紙の中心に書いて、連想される言葉を放射状に記してゆく。

 関連度の高いもの、意味が飛躍するもの、像的に類似するもの、意味から像へ、像から意味へと当たりをつけて、関連線で連結する。もちろん、音の要素も取り入れる。この作業は、言葉遊びだと思って、自由奔放にやっていくのだ。

 こうしてリストアップした語彙を、詩のキーワードに当てはめて、メタ文脈を検討することになる。
 この時、ひとつの語彙で、2つ、あるいは3つくらいの別の意味をもつコノテーションを使い分けるくせ者もいるので、<一対一>の対応だと思い込まないように。

 馴れてくると語彙を集めている最中に、脈釣りのようにアタリをとることができるようになる。
 ただし、二層構成、三層構成の詩になってくると、構造分析的に読む必要がある。

 技術を身につければ、おもての意味ではなく、メタ文脈のミッシングリンクを連ねるように言葉が連鎖していくだろう。この謎解きが面白いのだね。

 もちろんメタ文脈は意味や思想であったり、像的喩であったり、隠語であったり、音韻であったり自由奔放だ。

 ただし、荒川洋治の詩は年期の分だけ、言語体験が超集積されている。

 理解が及ばないところも多々あるけれど、読み手の経験が深まれば了解事項も増えてくると、とらわれすぎない方が良いかと思う。
 作者に訊け、と言うほかない場合もあるだろう。

 それで、<荒川>スタイルで詩を書くとすれば、この逆にやっていく。

 つまり、意味的な脈絡がありすぎる説明的な部分は、コノテーションに(連続)変換してゆく。
 像的な喩が難しいところでは、語呂合わせ的類似でいく。語呂合わせは話者の意図が丸見えなので、類語を連打して細かく繋いでいくことになる。
 それができないところは仕方がない。例の「默説法」で、意味ありげに処理しておけばいい。

 ストーリーの設定は、あなた任せになる。

 ストーリー・テラーでないわたしには、語る資格はないので、省く。

   

 まず、素材を集積しなければならない。材料が集まれば、家は建つ。

 宮大工あるいはシェフのごとき技量と、味のある素材があれば、立派な家、三つ星の料理をしつらえるのも夢ではないだろう。

 例によって、『遣唐』を理解するために、ジャコメッティーに倣い、自分の筆でなぞってみた。書を創造的に模写するのが臨書。詩を創造的にパロデるのは臨詩、かな。
 「娼婦論」以来二度目の臨詩となる。短い詩が多いので、やりやすい。

      臨詩 「祖師谷」  荒川洋治「存置」を底本にしています。

 ダジャレを書きそうになるのを、ぐっとこらえて、書きました。それで、最後に言わずもがなの一言を、カッコ内に付け加えておきます。読者の意味的理解のために。
 默説法にした方が、何やら難しそうで意味ありげだから、内容空疎なのを悟られたくない場合はそうすればよい、と。

 行分けのスタイルも踏襲しましたので、そのぶん窮屈で難しくなったように思う。

 今回は、宮武外骨の「猥褻廃語辞典」を読んで、隠語を選ばせていただいた。

 詳しい注記は、詩のページをご参照下さい。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://mediaxross.net/xnt/xzx/mt-tb.cgi/22

コメントする

この記事について

このページは、小林由典が2013年5月22日 17:17に書いた記事です。

ひとつ前の記事は「意味から像へのメタモルフォーゼ」です。

次の記事は「臨詩 「織リシス-石切山ノ神」 注釈」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

カテゴリ別記事一覧

アーカイブ

OpenID対応しています OpenIDについて