現代絵画、視覚効果の世界(1) 上野在森

現代絵画が示しているものは、画家の一筆ごとの創造過程の最終停止状態であり、具象絵画におけるような完成ではないという気がする。だが上野在森画伯の絵は見られることで完成する...

知り合いの上野さんのご主人が画家であることは知っていましたけれど、どういう絵を描く方なのかは識らずにいました。

 彼女からコメントの投稿をいただき、Picasa のページをのぞき、たいへん面白い絵であることを発見しました。面白い!

 どう面白いのかといえば、錯覚視覚効果あるいは自由連想であり、面白くて深いものがある。

 前回、ざっと見渡したときには、さほど強い印象を持たなかった、といってよい。
 デフォルト設定のスライドショーで、何回転かくり返し見ただけだったからだろう。

 見終えて思ったのは、このようなタイプの絵は...
  「作者自身がいちばん楽しんで(あるいは苦しんで)描いた」結果が示されているわけで、
 充分にそれを鑑賞しようとするならば、将棋や碁の岡目八目のように傍らにいて、あるいは控え室の中継画面を見て、

 最初の一筆がどこに置かれ、
 二筆目がどこに(トポス)、
 どんな色彩(スペクトル)で、
 どの方向(ベクトル)に...と、

 作者の創造行為に対する、受け手の想像行為による、
 一致や不一致、
 想定内あるいは想定外、
 意表を突く色彩とか、

 ようするに次の一手を、将棋や囲碁のような定石なしで、
 ひたすら自らの美意識と直感で予測し続けるゲーム性のような興奮を味わうのでなければ、
 その絵が本来内包している魅力は百分の一あるいは千分の一も伝わらないのではないか?
 ...という、好奇心に引きづられた思いをいだいていた。
 
 ですから、現代絵画の場合、
 古くさい布のカンバスではなくて、デジタル・カンバスみたいなものを考案して、
 最初の一筆から、最終の一筆まで、
 動画を見るように鑑賞できるものであるべきだ、と。

 メディアクロスを標榜しているわたしとしては、詩でもオーディオ・ヴィジュアルを志向している。

 けれども、上野画伯の絵は全然違う要素で成立しているように感じられる。
 それが錯覚視覚効果と言いたいものですけれど、これは私の視覚的習い性によるもので、
 プリミティブといえばプリミティブなのかもしれない。
 
 以前、子どもの頃私は壁板の木目を眺めながら、様々な水墨画的世界を想像するのが好きだった、という記事を書いている。
 それと同じことが、上野画伯の絵を見て引き起こされるのだね。しかも、多彩な想像が次々に喚起されるところがすばらしい。
 (画像にカーソルを持ってきてクリックすると、拡大画像が現れます。)

 3つのキャンバス

 これはギャラリーの最初にある絵ですけれど、試しに...
 任意の場所にある白あるいは青あるいは黒その他の色の部分に焦点を当てて、ぼんやりと周辺視を試みていただきたい。
 (この時、画像をできる限り大きくして視て下さい)

 どうでしょうか?
 白いペイント部だけが浮き上がり、何かを思わせるような形が、あたかもネオンサインの点滅変化のように現れるのではないだろうか!
 青い部分でも同じ。視る場所によって、喚起されるイメジが違うことも、確認できるかな...。

 私には、そう見えるよ。
 非具象絵画の場合「見飽きない」もの、が最低限のそして優れた作品の条件になるけれど、
 この絵は、ペイントの数だけバリエーションが現れるといってよいほどで、(実物を近くで見るとそうなるはずだ)
 じつに、面白い、飽きない!

 それで、この錯覚視覚効果の現れ方は、多分十人十色、千差万別であろうと思われるので、
 じつに心理的な見方をすれば、
 その人の持つ無意識あるいは潜在意識の世界をあぶり出す触媒のような働きをしているのではないだろうか?

 名付けて「精神分析絵画」(色弱検査絵ではない。念のため...)

 まあ、そんなことを考えずとも、錯覚視覚効果が面白い、飽きない!のだね。

 上にリンクで示したPicasa のページで、画面左上の画像の拡大アイコンをクリックして、試してみては。

      「現代絵画、錯覚視覚効果の面白く深い世界(2) 」に続く

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この記事について

このページは、小林由典が2012年2月25日 13:14に書いた記事です。

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