『ユネンティダ』(飽浦 敏)の価値(2) おもろさうし

「ユネンティダ」の本歌となっている、首里王府の編纂した神歌集『おもろさうし』。これについて、解説をしたい。南方言語とその文化について、状況コンテクストをみてゆく。

 つぎに取り上げるのは首里王府の編纂した神歌集『おもろさうし』。これについて、少し解説をしておきます。なぜ『おもろさうし』なのかといえば、「ユネンティダ」がこの神歌集を基底において、詩的営為が為されている、と推察されるからです。

 あわせて、私の興味のひとつである日本語の重層性の基底にある南方言語とその文化を追求する、という意味あいもあります。

 『おもろさうし』(おもろそうし)とは、尚清王代の嘉靖十年(1531 年)から尚豊王代の天啓三年(1623 年)にかけて首里王府によって編纂された歌集。

 沖縄の古い歌謡である「おもろ」を集録したものである。
 漢字表記すれば「おもろ草紙」となり、大和の「草紙」に倣って命名されたものと考えられる。

 そのルーツは祭祀における祝詞だったと考えられている。全22巻。1248句
 主にひらがなで書かれ、わずかだが漢字も混じる。
 短いものは2行から、長いものは40行に及ぶ韻文。

 部落時代(5、6世紀-12世紀):神、太陽、天体の礼賛、祭礼
 按司時代(12世紀-15世紀):築城、造船、貢租、交易、按司礼賛
 王朝時代(15世紀-17世紀):王の礼賛、建寺、植樹、貢租、航海などの非農村的なもの
                   神歌/労働歌の「ゑとおもろ」

 クェーナ形式=対語・対句を繰り返しながら事柄を確かめつつ、次第に全体の事柄を進めていく
          古い歌形。
 オモロ形式=対語によるくり返しを持たないまま事柄を進め、短く事柄や断片が構造化される。

※テダ...テラ(ティラ)からの音韻変化説と天道からの変化説がある。

 「おもろさうし」で詠われる太陽はほとんどが東天の太陽(東方=あがるい)の大主であり、中天で照りつける太陽ではない。
 この太陽は穴から出でて、穴に入るという思想があり、穴とは母胎の意味を持つ。この発想はエジプトの太陽神ラーと同様で、世界各地にあるようです。

 ※おもろにおける太陽は水平線の印象と結びついており、オボツカグラとニライカナイが末分化にあることを示している。

 ※オボツカグラ...オボツの意味は確かでない。カグラは神座であり、神の住処の意。国家的王権の成立に係わってくる。

 ※ニライカナイ...南東(辰巳の方角)の海の底、または海の彼方にあるとされる異境(豊穣や生命の源)であり、神界あるいは異界でもある、複合的な観念を持った楽土。

 オナリ神信仰...兄が政治を担う一方で、妹が宗教を担い、守り神として司祭を務める仕組み。

 神女の階級  キミ(聞得大君=きこえおおぎみ): ノロ :カミ(根神)
 人々の階級  王                   :按司:根人

 以上かなり荒っぽい概略ですけれど、この詩の背景を理解する上で最低限の前書きとしておきます。
 次に引用するのは、『ユネンティダ』が参照していると思われる、「おもろ」の歌謡です。

 『おもろさうし』

 第十九 

 1327番

     玻名城(はなぐすく)たゞな子(し)す    
     かてく按司(あぢ)に 思われゝ 
     下の世の主す
     真人 輝(きゃが)しよわれ

 1330番 「たづなが節」

   一 玻名城おわる     (玻名城におわまします)
     御愛しのてだの    (敬愛するお天道様=按司様が) みかなし
     苦世甘世為すてだ  (凶年・悪世を豊年・善世に)  にがようあまゆなす
   又 国の根におわる   (国の中心玻名城におわしまします)
   又 人の浦の苦世    (よその、他国の苦世)     にぎやゆ
     我が浦の甘世     (我が浦の甘世)
     苦世甘世なすてだ  (不作を豊作に変えるお天道様) 

 (注)「てだ」を、お天道様という意味と、按司様という2様の意味で、私が読み下しております。

 

     「ユネンティダの価値(3) 」に続く

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このページは、小林由典が2010年8月 7日 13:26に書いた記事です。

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