ジャコメッティが一番驚くだろうね

今朝のテレビニュースで、ジャコメッティの彫刻がオークションで94億円で落札され、史上最高額だったことが報じられていました。作品は「歩く人」のようでした。

 じつは昨日銀座の画廊で2人の画家の個展を見て回り、例の如く新橋で伊藤画伯と話し込みました。

 その時に、ジャコメッティと画商の会話の話をしたのです。
 アネット夫人の話として、宇佐見英治が書いている...

 「アルベルトったら...昨日ある画商がやってきて、矢内原の首(頭部彫刻)を一点六百万円で4点、売って欲しいと言ってきたのね。アレジアの例のカフェで、夕食の時。そしたら、アルベルトが画商に言うの。

 なぜ君はそんな高い値で、僕の作品を買うのか?
 僕の作品はそんなに価値のあるものじゃない。
 もっと廉く買い、廉く売ってはどうか?って。

 ...それは困るわよね」

 アネット夫人は満更でもなさそうに苦笑しながら、そういった。」

 質素でシンプルな生活を送っていた二人には、お金があっても使い道がないということだった。

アトリエ 狭く粗末なアトリエと母屋(右)

 母屋はベッドを置くと、座る場所もないということで、食事はすべてカフェでとる。
 コーヒーとゆで卵2つが定番だとか。
仕事着 一張羅の仕事着。外出着の背広とこの仕事着の2着しか上着を持っていなかったという。
 アネット夫人は洗濯する気などなかったのでしょうか?一着しかなかったならば、洗濯はできないね。寝る間も惜しんで制作に明け暮れるジャコメッティですし、作品を売る気もなかったので生活に余裕はなく、余計な買い物はできなかった。

 ジャコメッティはお気に入りの娼婦の部屋でシャワーをあびたりしていたり、アネットは矢内原伊作と一夜を過ごしたり...。
 矢内原伊作は悩んでジャコメッティに打ち明けるのだけれど、彼は「アネットはいい娘だから、それは良かった...」と、全く意に介さない。

 アルベルト・ジャコメッティにとっては、そんなことよりもアトリエの裸電球が切れてしまうことこそが大問題なのだ。
 かれは、カフェで誰かと話をしているときも、その相手を新聞紙や紙ナプキンなどにデッサンしていく。一人でいるときは、隣のテーブルに座っている女の子など即座にモデルにしてデッサンを始めてしまう。

 彼が生きていたなら、94億円という金額を聞いてこんな表情でその人を見るのだろうな...

Giakometti02.gif 君は何で、そんな高い金額で...?

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このページは、小林由典が2010年2月 4日 23:26に書いた記事です。

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